トランプ米大統領は16日、17日からの米韓合同軍事演習について、米軍の参加規模を「大幅に縮小」するようヘグセス国防長官に指示したと明らかにした。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との「非常に良い関係」を理由に挙げ、演習が北朝鮮に「敵対的なシグナル」を送るとの認識を示した。米韓同盟の中核をなす合同演習について、米大統領が開始直前に縮小を命じる異例の展開となった。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「北朝鮮の金正恩氏との非常に良い関係に照らせば、米国が韓国との合同軍事演習への参加にずっと以前から合意していたことをうれしく思わない」と投稿した。
その理由として、演習には多額の費用がかかり、その相当部分を米国が負担していると指摘。さらに北朝鮮について、自身が大統領を務めている間は「脅威的ではなく、敬意を示してきた」と主張し、そうした国に対して演習を実施することは「全く不適切で敵対的なシグナル」を送ることになるとの考えを示した。
トランプ氏は、演習を中止するには「遅すぎる」としたうえで、「ヘグセス戦争長官に合同軍事演習を大幅に縮小するよう指示した」と表明した。
対象となったのは、17~27日に予定されている下半期の定例米韓合同演習「乙支フリーダムシールド(UFS)」。UFSはコンピューターシミュレーションを使った指揮所演習と野外機動訓練などから構成され、北朝鮮による攻撃を想定した米韓の主要な定例演習だ。今年は韓国軍約1万8000人が参加し、北朝鮮が能力を高めている無人機やサイバー攻撃、全地球測位システム(GPS)への妨害などへの対処も訓練に盛り込まれる予定だった。
北朝鮮は米韓演習を「侵略戦争演習」などと呼んで繰り返し中止を要求しており、今回のUFSについても強く反発していた。北朝鮮外務省は14日、米日韓の軍事協力が「核同盟」へと変化していると非難し、脅威の高まりには抑止力の強化で対抗すると警告していた。
今回のトランプ氏の判断は、2018年の米朝首脳会談後の対応を想起させる。
トランプ氏は同年6月、シンガポールで金氏と初の米朝首脳会談を行った直後、米韓合同演習を「挑発的」で「非常に高価だ」と批判。その後、大規模演習が中止・縮小され、米朝の非核化交渉を後押しする措置と位置付けられた。
ただ、今回は当時と安全保障環境が大きく異なる。北朝鮮はその後、核・ミサイル能力を増強しただけでなく、ロシアとの軍事協力を急速に拡大。ウクライナ侵攻を続けるロシアに弾薬や弾道ミサイルを供給し、兵士も派遣している。
それにもかかわらずトランプ氏が、金氏との個人的な関係を明示的な理由として米韓演習の縮小を命じたことは、今後の対北朝鮮政策を占ううえでも注目される。
トランプ氏はこれまで金氏との関係の良さを繰り返し強調し、米朝対話の再開に意欲を示してきた。今回の演習縮小が、金氏を交渉の場に呼び戻すためのメッセージである可能性もある。
米韓両国はUFSを北朝鮮の攻撃に備えるための「防御的」な訓練と位置付けてきた。開始直前の米大統領による縮小指示が、実際の訓練内容や参加兵力にどの程度反映されるのかは現時点では明らかになっていない。
北朝鮮がトランプ氏の決定をどう評価するかも焦点となる。金氏がこれを米側からの対話再開に向けた譲歩と受け止めれば、2019年に事実上決裂した米朝首脳外交が再び動き出す可能性もある。
しかしこのところ、金正恩氏や妹の金与正朝鮮労働党総務部長は、対米対話に前向きなメッセージを出していない。むしろ金正恩氏は中国と歩調を合わせる形で、米国の「覇権主義」をけん制している。北朝鮮が短期的に望むものは、ロシアや中国から入手できるとの打算があるのだろう。
それでも、米国大統領との「良好な関係」は維持するに越したことはない。
「金正恩氏との非常に良い関係」を前面に押し出したトランプ氏の決断は、朝鮮半島情勢を再び首脳間の直接外交へと動かすのか。それとも米韓同盟に新たな亀裂を生むのか。北朝鮮側の反応が次の焦点となる。
