ロシア軍の弾道ミサイル攻勢にウクライナは「旧ソ連製迎撃弾」大量改修で対抗


北朝鮮の力まで借りたロシア軍の弾道ミサイル攻勢にさらされるウクライナが、旧ソ連時代に開発された地対空ミサイルS-300の迎撃弾を米国と共同で改修し、防空能力の立て直しを図っている。老朽化した迎撃弾を再生するだけでなく、性能を高めた新型弾を開発する可能性もあり、年間100~数百発規模の供給を目指しているという。

背景にあるのは、ロシア軍による弾道ミサイル攻撃の激化と、それを迎え撃つ米国製パトリオットの深刻な弾薬不足だ。

米専門家が明らかにした「S-300再生」
計画について明らかにしたのは、ロシアや旧ソ連圏の安全保障を専門とするロバート・E・ハミルトン米陸軍予備役大佐。米公共放送PBSの番組「NewsHour」で5日、米国とウクライナによる共同事業が進んでいると説明した。

ハミルトン氏によると、計画は旧式のS-300迎撃ミサイルを改修、性能向上させるか、より新しいS-300用迎撃弾を開発するというもの。2026年末ごろには実用化され、年間100発から数百発規模を供給できるようになるとの見通しを示した。

実現すれば、ウクライナが大量に保有してきた旧ソ連製防空システムを再び活用する道が開ける。

S-300はソ連が開発した長射程地対空ミサイルシステムで、ウクライナではS-300PT、PSなどが長く防空の中核を担ってきた。発射機やレーダーなどが残っていても、ロシア製の迎撃弾を新たに調達することはできない。戦争の長期化で、ミサイルの在庫枯渇が大きな問題となっていた。

今回の米ウ共同事業は、この「撃つ弾がない」というS-300最大の弱点を解消しようとするものだ。

40年前のミサイルを「工場再生」
ウクライナがS-300迎撃弾の再生に取り組むのは、今回が初めてではない。

ウクライナ空軍に配備されたS-300P系列の主要迎撃弾には5V55K、5V55Rがあり、ウクライナ側の資料によれば、保有弾は主に1985~97年に製造された。2017年の段階ですでに相当数が規定の耐用年数を迎えており、ウクライナは寿命を30年まで延ばす作業に加え、それを超えて使用するための寿命延長と工場修理能力の確立を課題としていた。

実際、同年にブルガリアで行われた演習では、ウクライナ国内の工場で修理・再生された5V55Rを4発発射し、4発とも標的への迎撃に成功した。

今回の米国との共同事業は、こうした従来の寿命延長をさらに大規模かつ高度なものにする可能性がある。

ただし、ハミルトン氏の発言だけでは、保管されている古い迎撃弾をどの程度再生するのか、新造部品を組み込んで事実上「再製造」するのか、あるいはS-300に適合する新設計の迎撃弾を生産するのかまでは判然としない。

同氏自身も「古いS-300ミサイルの改修・性能向上」と「より新しい型」の双方に言及しており、複数の方式が並行している可能性がある。

パトリオットが「弾切れ」
英紙フィナンシャル・タイムズは今月、ウクライナのパトリオット部隊が迎撃弾不足に直面し、ロシア軍による弾道ミサイル攻撃への対応が著しく困難になっていると報じた。5日と8日の攻撃では弾道ミサイルを迎撃できず、ウクライナ側は西側諸国に防空ミサイルの追加供給を強く求めている。

ロシア軍が使用するイスカンデルMなどの弾道ミサイルは、高速で落下するため迎撃が難しい。さらにロシアは極超音速ミサイル「キンジャル」を使用しているほか、北朝鮮からKN-23系列とみられる弾道ミサイルの供給も受けてきた。

これに対し、ウクライナにとって弾道ミサイル防衛の切り札となってきたのが、パトリオットとPAC-3系列の迎撃弾だった。

しかしPAC-3は高価で、生産できる数にも限界がある。ロシアが弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルや無人機を組み合わせた大規模攻撃を繰り返せば、ウクライナ側は限られた高性能迎撃弾をどの標的に使うかという厳しい選択を迫られる。

そこで再び浮上したのがS-300だ。

S-300でパトリオットを「温存」
改修されたS-300迎撃弾がそのままパトリオットの代用品になるとは限らない。

従来型のS-300PT/PSと5V55系列は、航空機や巡航ミサイルなどを迎撃する強力な防空兵器ではあるものの、最新のPAC-3 MSEと同等の弾道ミサイル迎撃能力を持つわけではない。米ウ共同事業によって弾道ミサイルへの対処能力がどこまで向上するのかも明らかになっていない。

それでも、S-300を大量に復活させる軍事的意味は大きい。S-300に航空機や巡航ミサイルなどを任せれば、希少なPAC-3をイスカンデルMやKN-23など、より危険な弾道ミサイルに集中できるからだ。

年間100~数百発という規模も、ウクライナ全土をS-300だけで守れるほどではない。それでも、現在残っている発射機、レーダー、整備設備、そしてS-300に習熟した兵士を再び戦力化できれば、その効果は単純なミサイルの本数以上のものになるだろう。