「開発が事実だとしても、北朝鮮がSLBMを実用化するまでにはかなりの困難を伴うでしょう。実用化できても、それでどんな戦略を実現できるのか疑問。弾道ミサイル潜水艦の強みは生存性の高さですが、北の潜水艦は騒音が大きくすぐに見つかってしまう。原潜と違って、ずっと潜ってもいられない。そうでなくとも、北の潜水艦の動向は偵察衛星で常に監視されていて、いざとなれば世界最強の対潜能力を持つ米海軍と海上自衛隊がすぐに捕まえてしまうでしょう。
またそれ以前に、潜没している潜水艦にミサイルの発射命令を伝えるには、波長が数十メートルに達するVLF(超長波)電波を送らねばならず、その送信施設は数キロから十数キロ四方の巨大施設になります。北にはこれがないので、平壌から命令を伝えることすらできません」
日本で報道が少ないのは、現場の記者たちがこうした分析に接しているからかも知れない。
しかし一連の情報の真偽を見極めるためには、日本でこそ取材・検証が可能な部分もある。北朝鮮がゴルフ級潜水艦をロシアから輸入した際、取引を仲介したのが東京都杉並区に本社を置く小さな日本企業だったからだ。(つづく)
【連載】
北のミサイル潜水艦開発(上)「日本企業」の影
北のミサイル潜水艦開発(中) 阻止に動いた日本
北のミサイル潜水艦開発(下)自衛隊と対峙