核実験を受け、韓国軍がただちに対北宣伝放送を再開し、米軍の戦略爆撃機が電撃的に朝鮮半島に展開したのは、当事者の誰もがそのことに気づいていることの証左と言えるかもしれない。
ちなみに時間的な猶予は、ほかの誰にも増して、金正恩氏にとって重要なものだった。若年の彼はその時間を有効に使い、独裁者としてより大きな力を蓄えるべきだったのだ。ところが、もはや誰にもそんな「ヒマ」はないのだということを、金正恩氏は自ら示してしまったのである。
金正恩氏は、八方ふさがりの状況にある。
国連で凄惨な人権侵害の実態が暴かれ、その責任者を国際刑事裁判所において「人道に対する罪」で裁くべきとする主張が公式化している以上、もはや金正恩氏と握手を交わすことのできる先進国首脳はほとんどいない。そのことは金正恩氏もわかっているはずで、だからこそ、「水爆実験の成功」を宣言した声明で「謀略的な『人権』騒動」への反発をあらわにしているのだ。
彼のうたう核と経済の併進路線は、国際社会から目を背けて国内に籠城し、一部の友好国とのみ付き合うことを宣言しているに等しい。
排除すべき名分
しかし、経済とはそんなに甘いものではない。