ある在日3世の自画像「学歴で自分を飾る選択肢なんかないと思っていた」


とはいっても、医師や弁護士というのはかなりハードルが高い。猛勉強してなし遂げた根性者が親戚にも何人かいるが、「オレにはムリだ」と早々に開き直る向きがむしろ多かった。あるいは、「中途半端な受験勉強ならやるだけ無駄」と思える環境がむしろ、スポーツや芸能に秀でた者がわき目も振らず突き抜けていく、ひとつの理由に通じているとも言える。

「差別の置き土産」と向き合う

そうした特別な能力を持たないその他大勢のうち、ある者は思い切り遊び、またある者はただダラダラと十代を過ごした。

しかし、そんな安穏とした時間もやがて終わる。社会に出ると、厳しい現実と向き合わなければならない。

在日2世は、多くが無年金状態にある。国民年金制度は1982年に国籍条項が撤廃されるなどして在日外国人も加入できるようになった。だが、労働環境がきちんと整った日本企業に就職できず同胞の営む零細な企業で働くなど、社会保障制度と無縁の者ばかりが寄り添って生きていた在日の多くが、年金に進んで加入する意識を持てなかったのだ。